定義
外反母趾とは足の親指(第1趾)が体の中心(正中線)に対して外側に曲がっている状態をいう。外反母趾は足指の筋力低下(小児の場合、発達不足)、靭帯の緩みにより足底アーチの崩れに伴い起こる。外反母趾で痛みがある時は変形が進もうとしているという時であり早めの対策が肝要である。また自然に痛みが取れた場合も、変形は残り不安定な足の状態では歩行時足からの衝撃やねじれを体に伝えてしまい、足以外の場所に2次的損傷を与えてしまう可能性が出てきます。
外反母趾の角度が15〜20°で軽度、20〜30°で中程度、30°以上で重度の外反母趾となる(諸説あり)。30°以上になると、足だけの問題ではなく既に足以外の場所にも悪影響を及ぼしている状態の可能性が高い。
種類
①靭帯性外反母趾
足底部の機能低下(小児の場合、発達不足)により、足指付け根(横アーチ部)の横中足靭帯が伸長し緩んで母趾(親指)が第5趾(小指)側に曲がっているもの。
②仮骨性外反母趾
歩行時や走行時、足指の機能低下や発達不足があると、足指の代わりを足指の付け根がしてしまい、衝撃を受けた母趾(親指)付け根の骨が防御反応により異常に発育(仮骨形成)して横に出っ張ったり縦に出っ張ったりしたもの。母趾(親指)そのものはそれほど曲がってはいないが、母趾(親指)付け根の骨が異常に出っ張り曲がったようにみえる。
③混合性外反母趾
上記の①と②の両方の要素が混在するもの。中年以降に多く見られる。
④ハンマートゥ性外反母趾
足底部の機能低下(小児の場合、発達不足)により、足指が歩行時や走行時に地面より浮いている(浮きゆび)状態で趾先がアルファベットのZ字型に縮こまりながら母趾(親指)が外反しているもの。
⑤病変性外反母趾
ヘバーデン結節や関節リウマチなどの膠原病的要素に加え、ケガや事故などの影響により著しい変形になり易く、足趾どおしが重なったり、足指付け根の関節が亜脱臼や脱臼したり、足底部に分厚いタコが出来ていたりするもの。比較的短期間で進行してしまう傾向がある。
原因
1次的な要因として、足裏の刺激不足による「足趾の機能低下」
靴を履いて生活するようになった先進国といわれる国の人々は、足裏を覆ってしまったために足裏を刺激されることがなくなり(=足底反射障害)、足趾の機能が発達しなかなった。さらに歩行時足をつまづかないようにと無意識に足趾を上げて(浮きゆび)歩くような悪いクセがつき、さらに足趾の機能低下が進んでしまう。元来人間は足裏を刺激されると足趾を踏ん張り返す反射が備わっています。裸足で生活している国の人々は自然と足裏を刺激され足趾の機能が向上し、足底部の安定とそれに比例してバランスの良い骨格が形成されます。逆に靴を履いて生活する人々は、足底部の不安定と共に体の歪みや身体不調(運動器系・自律神経系)を起こします。
2次的要因として「靴(履き物)の影響」
靴を履いて生活する人々が靴(履き物)を選ぶとき、機能を考えて選ぶ人は少ないようです。カラーやデザインやTPOで選ぶことが多いのではないでしょうか。デザイン性の良い靴は先が細くなっていたりと足の形状とは反したものとなっている場合もあります。とくに女性の場合のハイヒールやパンプスはそういう傾向が強く出ています。足趾の機能が低下している状態でそのような先の細いパンプスやヒールや革靴を履くことにより機能低下した足が靴の形に合わされていくカタチとなります。またサイズが合わない靴(大きすぎる/小さすぎる)の場合も同じです。
3次的な要因として「先天的形体異常」「後天的疾病」
生まれつき足趾が長すぎたり逆に短かすぎたりして足趾が踏ん張りづらい特徴や、中高年以降の世代では膠原病的要素(関節リウマチやヘバーデン結節など)により関節炎が起こり易い体質となり関節損傷(外反母趾)をより進めてしまいます。
改善方法
これまで外反母趾の改善には外科的治療(手術)や足底板療法(インソール療法)というのが一般的な考えでした。手術では骨を削ったり切ったり、また、筋肉(腱)を切って筋の走行を変えたりして、曲がった母趾を真っ直ぐにするためのものです。
外反母趾は単に母趾が曲がっているだけではなく、足部の機能低下により開張足やアーチ低下などを伴い複合的な形体異常を呈する病態となります。たとえ手術で曲がった母趾を真っ直ぐにしても足部の機能回復は計れません。手術は形を治す治療となり、大事な点はその足にまた体重を乗せてしっかり地面を蹴り出せるようならないと、また普段の生活の過程で状態が悪化したり、再度変形を起こしたり、最悪のケースでは再手術ということが起こってしまいます。一時的に母趾の形をキレイに出来ても、歩き方や足趾の機能が低下したままだとまた変形が進んでしまいます。外反母趾を根本改善するためには、しっかり足・足趾の機能を改善して、そもそも外反母趾にならないような状態にする必要があります。
手術以外の改善方法として足底板療法(インソール療法)があります。インソールで足部アーチを補うことにより荷重を分散させ痛みを解消させるというアプローチです。インソールでの改善は足りない部分を補うということで一時的には効果的な場合がありますが、インソールの機能に依存してしまうカタチとなり、足趾を使わなくなり逆に足部の機能低下が進んでしまうというデメリットがあります。あくまで足部アーチは足趾を使用することにより出来るものであり、インソールで作るものでは本来ありません。
足部の機能を根本から改善するには「整足テーピング」による施術が適しています。足部に適度な縦・横アーチを作り趾と趾の間を拡げ、さらに足趾一本一本にテーピングを施すので足趾が前に伸び、足趾自体が使いやすくなり足本来の機能の改善を目指すことができます。
手術によって一時的に形をキレイにしたりインソールでアーチをを持ち上げるという対症療法ではなく足本来の機能をしっかり向上または取り戻せる「整足テーピング」による改善が外反母趾施術の第一選択となります。